
日本のデジタルノマドビザ(特定活動・告示53号)は、対象となる49の国・地域の国籍であること、年収1,000万円以上、民間医療保険への加入、日本国外のクライアントとの契約という、4つの条件を満たすことで取得できます。
デジタルノマドの在留資格は、2024年4月にスタートした制度です。最長6か月、海外の仕事を続けながら日本に滞在することができます。
本記事では、日本のデジタルノマドビザについて
・取得できる条件(国籍・年収・保険・働き方)
・申請に必要な書類
・手続きの流れと審査期間の目安
・申請前に知っておきたい注意点
を、日々ビザ申請の実務に携わる行政書士の視点から解説します。
申請を検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
日本のデジタルノマドビザ(特定活動・告示53号)とは

日本のデジタルノマドビザとは、海外の雇用主や顧客との契約を続けながら、日本でリモートワークができる在留資格です。 正式には「特定活動(告示53号)」といいます。認められる活動は、
主に以下の2つです。
・海外の企業との雇用契約に基づくリモートワーク
(ITエンジニア、ソフトウェア開発者、Webデザイナー、オンライン秘書など)
・海外の顧客に対するオンラインでのサービス提供・物品販売
観光目的の短期滞在ビザの在留期間が最長90日なのに対して、デジタルノマドビザは最長6か月滞在することができます。また、本資格では海外クライアントとの契約のみ認められており、日本国内での就労活動はできません。
制度導入の背景には、コロナ禍をきっかけに世界規模でリモートワークが普及したこと、在宅ワークやノマドワークという働き方が急速に広まったことがあります。高所得層が多いデジタルノマドに日本へ滞在してもらうことで、消費による経済効果やイノベーション促進が期待されています。
詳しくは、「デジタルノマドビザとは?日本で取得する方法と必要書類を徹底解説」をご覧ください。
日本のデジタルノマドビザの取得条件

日本のデジタルノマドビザを取得するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 査証免除国かつ租税条約締結国の国籍を持つこと
- 個人年収が1,000万円以上であること
- 仕事の相手先が日本国外であること(日本企業への就労は不可)
- 補償額1,000万円以上の民間医療保険に加入していること
1つでも欠けてしまうと申請できないため、自分が要件に当てはまるかを事前に確認しておきましょう。
1. 対象国籍
取得できるのは、査証(ビザ)免除国かつ日本と租税条約を締結している国・地域の国籍保有者に限られます。 以下、対象となる49か国・地域です(2026年2月現在)。
| アジア・オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、香港、マカオ、ブルネイ |
| 北米 | アメリカ、カナダ |
| 中南米 | アルゼンチン、チリ、メキシコ |
| ヨーロッパ | イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランド、アイルランド、オーストリア、ポルトガル、ギリシャ、ルクセンブルク、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ブルガリア |
| 中東 | イスラエル、アラブ首長国連邦、トルコ |
| アフリカ | 南アフリカ |
なお、インド・フィリピン・インドネシアなどは現時点では対象外です。
年収要件:年収1,000万円以上
デジタルノマドビザでは、申請者本人の年収が1,000万円以上必要です。世帯年収ではなく、個人の収入で判断されます。また、以下のケースも認められています。
- 昇給・昇格により、今後1,000万円以上となることが見込まれる場合
- 新規採用で契約年俸が1,000万円の場合
- 複数の収入源がある場合(安定的な収入と認められれば合算可能)
個人事業主の場合は、契約金額ではなく、必要経費を差し引いた利益の金額で判断されます。証明書類として、雇用契約書や取引先との契約書(金額・期間の明記があるもの)、納税証明書、所得証明書などが必要です。
なお、税金については、租税条約の要件を満たせば日本での課税が免除される場合があります。ただし、租税条約の内容は国によって異なるため、詳細は自国の税務当局や税理士に確認することをおすすめします。
働き方:日本企業への就労は不可
デジタルノマドビザでは、仕事の相手先(雇用主・顧客・事業拠点)が日本国外にあることが前提です。日本国内の企業や個人との新たな雇用・業務委託契約は認められていません。
本人だけでなく、帯同する配偶者・子どもも同様に日本国内での就労は禁止です。違反した場合は在留資格の取り消しや強制退去などの処分を受ける可能性があります。
その他:民間医療保険への加入
デジタルノマドビザでの滞在者は中長期在留者に該当しないため、日本の公的医療保険(国民健康保険等)に加入できません。そのため、民間の医療保険への加入が必須となっています。
加入する保険は、以下の3つの条件をすべて満たしていなければなりません。
- 滞在予定期間全体をカバーしていること
- 傷害・疾病への治療費用補償額が1,000万円以上であること
- 死亡時の補償(遺体輸送費または死亡保険金の支給)が含まれていること
海外旅行傷害保険やクレジットカード付帯の海外旅行保険も、上記の条件をすべて満たせば利用できます。
デジタルノマドビザの申請に必要な書類

デジタルノマドビザの申請に必要な書類は、主に以下の書類です。
【デジタルノマド本人の必要書類】 ・査証申請書(写真貼付) ・旅券(パスポート) ・在留資格認定証明書 ・活動予定・滞在期間を説明する資料 (法務省指定様式) ・年収1,000万円以上を証明する書類 (納税証明書・所得証明書・雇用契約書・取引先との契約書等) ・民間医療保険の加入証書および約款の写し |
また、帯同家族の場合は以下のような書類が必要になります。
【帯同する配偶者・子どもの必要書類】 ・査証申請書(写真貼付) ・旅券(パスポート) ・在留資格認定証明書 ・活動予定・滞在期間を説明する資料 ・民間医療保険の加入証書および約款の写し ・申請人と本人の身分関係を証する書類 ・本人の旅券の写し |
書類の不備は審査の遅延や不許可につながるため、提出前にしっかり確認しておきましょう。なかでも、年収証明書類、就労・取引契約書、医療保険証書の3つは審査の要となります。日本語または英語での記載が必要な場合もあるため、必要に応じて翻訳したものを用意しましょう。
出典:外務省「特定査証:特定活動(デジタルノマド・デジタルノマドの配偶者等)」
日本のデジタルノマドビザ取得手続きの流れ

デジタルノマドビザの申請は、日本国内で行う「国内申請」と、本国の日本大使館・総領事館で行う「在外公館申請」の2つがあります。それぞれ手順や審査期間が異なるため、自分の状況に合った方法を選びましょう。
申請前の準備
申請手続きを進める前に、まずは以下の点を確認・準備しておきましょう。
・自分の国籍が対象の国や地域に含まれているか確認する
・年収証明に使う書類(納税証明書・雇用契約書等)を発行・収集する
・医療保険の内容を確認し、3つの条件をすべて満たしているか確認する
・法務省指定の活動説明様式をダウンロードして記入する
特に、年収証明書類や保険証書は発行に時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
申請の流れ
申請方法は「国内申請」と「在外公館申請」の2つがあります。
国内申請(日本滞在中に申請する場合)
来日前にビザを取得せず、短期滞在(ビザなし)で来日してから手続きを行う方法です。
- 書類を準備する
- 管轄の地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を提出する
- 証明書が交付されたら在留資格変更許可申請を行う
- 審査完了後、日本国内でデジタルノマドビザでの活動を開始
許可が下りればそのまま日本で活動を続けられます。 在留期限(短期滞在90日)を過ぎる前に申請を完了させる必要があるため、来日後は早めに手続きを進めましょう。
在外公館申請(本国から申請する場合)
居住国の日本大使館・総領事館で査証を申請する方法です。
- 書類を準備する
- 居住国の日本大使館または総領事館で査証申請を行う
- 審査完了後、発給された査証の有効期間内に日本へ入国する
- 上陸審査を経て、デジタルノマドビザでの滞在を開始
来日前に審査が完了しているため、入国後すぐに活動を始められます。しかし、審査完了まで数か月かかる場合があるため、早めに申請しましょう。
審査期間の目安
国内申請の場合、審査期間はおおむね1〜3か月です。書類に不備があった場合、短期滞在の在留期限(90日)内に審査が終わらないケースもあるため、余裕を持って申請しましょう。
日本のデジタルノマドビザ申請の注意点とスムーズに取得するポイント

デジタルノマドビザは2024年に始まった新しい制度のため、他とは異なるルールが複数あります。主に、以下の4つです。
- 更新・延長は不可
- 日本国内での就労は禁止
- 賃貸契約が困難
- 民間の医療保険への加入が必須
申請前に把握しておくことで、トラブルや審査の遅れを防ぐことができます。
更新・延長は不可
デジタルノマドビザの在留期間は最長6か月で、更新・延長は一切認められていません。 再度取得したい場合は、在留期限内に出国し、出国から6か月以上が経過した後であれば再申請が可能です。
また、デジタルノマドビザから就労ビザなど他の在留資格への変更も、原則として認められていません。日本への就職・長期移住を検討している場合は、デジタルノマドビザとは別に計画を立てる必要があります。
日本国内での就労は禁止
このビザでは、資格外活動許可を取得することができません。 つまり、日本国内の企業でのアルバイトや、日本の顧客へのサービス提供は一切禁止です。
本人だけでなく、帯同する配偶者・子どもも同様に就労できません。 違反した場合は、在留資格の取り消しや強制退去の対象になる可能性があります。
賃貸契約は難しい:短期物件の活用が必要
デジタルノマドビザでは在留カードが発行されません。
在留カードがないと、一般的な賃貸契約の入居審査に落ちやすくなります。
また、6か月という滞在期間は長期賃貸に向かないため、マンスリーマンション・家具家電付き短期物件・民泊(Airbnb等)を活用するのが現実的です。
民間の保険加入が必須
デジタルノマドビザを取得している在日外国人の方は、日本の公的医療保険に加入できないため、民間の医療保険への加入が必須となります。
クレジットカード付帯の保険を利用する場合は、補償内容を必ず事前に確認してください。
審査に時間がかかる
審査期間の目安は1〜3か月ですが、書類の不備があった場合は当然、手続きにかかる期間も長引きます。 これは、デジタルノマドビザに限った話ではありませんが、初めて申請をする方は特に注意が必要なポイントです。
書類に不備があっても再提出できる場合がほとんどですが、事前に内容を丁寧に確認することが、スムーズな取得につながります。不安がある方は、ビザ申請の専門である行政書士への相談をおすすめします。
まとめ

日本のデジタルノマドビザは、条件を満たせば最長6か月、海外の仕事を続けながら日本に滞在できる魅力的な制度です。 申請を検討している方は、まず以下の取得条件を満たしているか確認することから始めましょう。
- 国籍:査証免除国かつ租税条約締結国の国籍保有者(49か国・地域)が対象
- 年収:個人年収1,000万円以上の証明が必要
- 働き方:仕事の相手先が日本国外であること(日本国内での就労・アルバイトは禁止)
- 保険:補償額1,000万円以上の民間医療保険への加入が必須
条件を満たしていることが確認できたら、次は必要書類の準備と申請ルートの選択です。審査には1〜3か月かかります。スケジュールに余裕を持って手続きを進めましょう。
本記事が、日本のデジタルノマドビザの取得のお役に立てましたら幸いです。