

在留資格は、外国人の方が日本で活動する上で欠かせない資格です。中でも「特定活動」は、日本での活動の幅を広げてくれます。
しかし、「特定活動の種類が多くてどれが自分に合うのかわからない…」「手続きって何から始めればいいの…?」こんなお悩みをお持ちではありませんか?
本記事では「特定活動」の基本から、おもな活動内容、申請の流れ、そして陥りやすい注意点まで、ステップごとに解説いたします。最適な特定活動を知りたい、申請手続きを滞りなく進めたいとお考えの方はぜひ最後までご覧ください。
在留資格「特定活動」とは
在留資格「特定活動」とは、既存の在留資格のどれにも当てはまらない活動を行う外国籍の方に付与される資格です。
既存の在留資格は、入管法により日本での活動内容が定められています。一方「特定活動」は、外国人の個々のケースに対して付与される在留資格で、活動の内容は多種多様です。
そのため、在留資格「特定活動」で就労できるかどうかも、個別に認定された活動によって異なります。同様に、活動できる期間も「5年・3年・1年・6ヶ月・3ヶ月・5年以内で個々に指定された期間」と定められています。
特定活動3つの基本分類と特徴
特定活動の種類は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【特定活動1】出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められている特定活動は、以下の3種類があります。
【入管法で規定されている3つの特定活動】
特定活動の種類 | 活動内容 |
1) 特定研究活動 | 日本国内の機関で研究又は研究の指導や教育をする外国人 |
2)特定情報処理活動 | 自然科学や人文科学の分野の知識、技術が必要な業務に従事する外国人 |
3)特定研究等活動等の親・特定研究等活動等の家族 | 「特定研究活動」又は「特定情報処理活動」を行う外国人の方の配偶者又は子、同居する親 |
【特定活動2】告示特定活動
「告示特定活動」は、法律による規定がなく法務大臣の告知により付与される在留資格です。
例えば、外交官の家事使用人、アマチュアスポーツ選手、日本の事業所で製造業務に従事する外国人などの活動が該当します。
告示特定活動の種類は現在46種類です。(2025年4月現在)しかし、告示特定活動は国内外の社会情勢の動向によって種類が変動という特徴があり、その時々に応じて増減します。
告示特定活動の種類について、詳しくは在留資格「特定活動」告示一覧をご覧ください。
【特定活動3】告示外特定活動
「告示外特定活動」は法務大臣が定めた基準ではなく、一人ひとりの外国人の事情により個別に認められる特定活動です。
例えば、日本での就職を希望する留学生や、日本から出国するための準備をしている人に、「告示外特定活動」が付与されます。
主要な特定活動
在留資格「特定活動」には、様々な種類がありますが、以下におもな特定活動を5つ紹介します。
- 本邦大学卒業者
- インターシップ
- ワーキングホリデー
- 経済連携協定に基づく外国人看護師
- 経済連携協定に基づく介護福祉士候補者等
1.本邦大学卒業者
「本邦大学卒業者」は、日本の大学院、大学、短期大学、高等専門学校を卒業した外国籍の方を対象とした特定活動です。法務大臣が指定する機関で常勤として勤務する際に付与されます。
【期間】
5年・3年・1年・6ヶ月・3ヶ月
2.インターシップ(報酬を受ける場合)
特定活動「インターンシップ」は、外国の大学生が学業等の一環としてインターンシップを行い、報酬を受ける場合に付与されます。
【期間】
1年かつ通算で大学(外国の)での修業年限の二分の一を超えない期間
3.ワーキングホリデー
基本的に18歳から30歳までの外国籍の方が休暇で来日する際は「ワーキングホリデー」という特定活動が与えられます。
「ワーキングホリデー」は働くこともできますが、報酬額は「旅行資金を補う範囲」と定められています。
【期間】
1年
4.EPA看護師候補者
「EPA看護師候補者」とは、海外から看護師候補者を受け入れ研修を実施する特定活動です。
EPAとは、2つ以上の国で外交や経済のつながりを強化する協定(経済連携協定の略)です。現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムと「EPA看護師候補者」の協定を結んでいます。
候補者は、看護師の知識や技能を身につけるための研修を目的として、日本での業務に従事します。
【期間】
1年
5.EPA介護福祉士候補者
「EPA介護福祉士候補者」とは、海外から介護福祉士候補者を受け入れ研修を実施する特定活動です。候補者は、介護福祉士として必要な知識や技能を習得するための研修として、日本での業務に従事します。
【期間】
1年
特定活動の申請条件
特定活動の資格を取得するための条件は、活動の内容によって大きく異なります。本章では、前述した以下の3つの活動内容ごとに申請の条件を解説していきます。
【3つの特定活動】
1.出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
2.告示特定活動
3.告示外特定活動
特定活動の申請には様々な条件が設けられているため、それぞれ主なものをご紹介します。
1.出入国管理及び難民認定法(入管法)に規定されている特定活動の条件
入管法に規定されている特定活動を取得するための条件には、おもに以下のようなものがあります。
【入管法で規定されている特定活動の条件】 ・日本の大学や専門学校で、従事する業務の分野を専攻したこと ・上記と同等以上の教育を受けたこと ・大学・高校での専攻期間を含め、10年以上の実務経験があること ・日本人と同等以上の報酬を受けること |
2.告示特定活動の条件
告示特定活動は活動の種類が多く、それだけ条件も多岐にわたります。ここでは代表的な例として、本邦大学等卒業者の特定活動を見ていきましょう。
本邦大学等卒業者を取得する条件として、おもに以下の内容が挙げられます。
【告示特定活動の条件:(例)本邦大学卒業者】 ・日本の大学、短期大学、高等専門学校などを卒業していること ・日本語能力が高い方日本語能力を活用した業務に就くこと (例えば、清掃や皿洗いなど日本語を話せなくてもできる業務は認められません) ・フルタイムで業務に従事すること |
上記の「日本語能力が高い方」とは、具体的には、以下3つのうちどれか1つに該当する方をいいます。
- 日本語能力試験NI又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方(旧試験制度「1級も可」)
- 大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方
- 外国の大学・大学院で日本語を専攻し、かつ日本の大学・大学院を卒業・修了している方
3.告示外特定活動の条件
告示外特定活動の代表的な例として、留学生が大学等を卒業しても引き続き日本で就職先を見つけたい場合をご紹介します。
留学生が継続して就職活動を行う際の特定活動を取得する条件は、以下の書類を提出することです。
【必要書類:(例)留学生が引き続き就職活動を行う】 ・在籍していた学校の卒業証明書 ・在籍していた学校の推薦状 ・引き続き就職活動を行っていることが分かる資料 |
ちなみに、告示外特定活動には上記のほか、おもに以下のような活動があります。
- 留学期間を終えて出国の準備をする
- 技能実習を終えて特定技能1号へ移行する
なお、その他の特定活動の取得条件について、詳しくは出入国在留管理庁:在留資格「特定活動」よりご確認ください。
特定活動の取得方法
本章では特定活動の取得方法を、一般的な手順と個々のケース別に紹介します。
特定活動の取得手順
特定活動を取得するための一般的な手順は、以下の3ステップです。
【特定活動の取得手順】
STEP1.準備 |
個別の申請書、パスポートなど必要書類を準備する |
STEP2.申請 |
準備した書類を地方出入国在留管理署に提出し申請する |
STEP3.交付 |
地方出入国在留管理署で新しい在留カードを受け取る |
※審査に通れば入国管理局よりハガキが届くため、ハガキを持って地方出入国在留管理署の窓口へ出向きます。
特定活動の取得方法(ケース別)
在留資格「特定活動」の取得方法は、活動内容や申請者本人の立場などにより異なります。以下の3つのケースについて特定活動の取得方法を説明します。
- 日本への入国を希望する場合
- 日本に滞在中の外国籍の方が日本での就職を希望する場合
- 「特定資格」の在留期間を延長したい場合
【特定活動の取得方法1.】日本への入国を希望する場合
外国籍の方が「特定活動」での日本への入国を希望する場合は、まず「在留資格認定証明書交付申請」の手続きを行う必要があります。在留資格認定証明書は、日本への入国に必須の在留資格を事前に証明する書類として不可欠な書類です。
申請の手続きを行うには、まず、出入国在留管理庁:「在留資格認定証明書交付申請」より、手続き方法と必要書類をご確認ください。
なお、特定活動の種類を確認される場合は出入国在留管理庁:在留資格「特定活動」をご覧ください。
申請を行うのは、申請者本人又は受け入れ先機関の職員、又は行政書士などの専門家です。審査に通れば「特定活動」の在留資格認定証明書が交付され、日本への入国が可能になります。
【特定活動の取得方法2.】滞在中の外国籍の方が日本での就職を希望する場合
「特定活動」(告示外)に該当するのは、留学など、すでに日本に滞在中の方がそのまま日本での就職を希望する方です。この場合、在留資格を「留学」から「特定活動」へ資格を変更する必要があるため「在留資格変更許可申請」を行います。
在留資格変更の手続きを行うのは、申請者本人です。在留資格変更許可申請の手続き方法及び必要書類等は、出入国在留管理庁:「在留資格変更許可申請」よりご確認ください。
【特定活動の取得方法3.】「特定資格」の在留期間を延長したい場合
現在の「特定資格」の期間を延長し活動を続けたい場合、申請者本人が「在留期間更新許可申請」の手続きを行います。在留期間更新許可申請の手続き方法及び必要書類等は、出入国在留管理庁:「在留期間更新許可申請」よりご確認ください。
ここまで、特定活動の取得方法について紹介してきましたが、取得方法は個人のケースによって様々です。申請が確実に認定されるとは限らないため、少しでも不安がある方は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
特定活動取得の注意点
特定活動を取得する際のおもな注意点は以下の5つです。
- 特定活動の取得要件を確認する
- 書類の不備は不許可になりやすい
- 申請する際は時間に余裕を持って手続きをする
- 「特定活動」には就労可と就労不可がある
- 在留中の素行不良は不許可になりやすい
申請前に注意点を確認することで、不許可になるリスクを減らせます。それでは一つずつ見ていきましょう。
特定活動の取得要件を確認する
「特定活動」の取得要件を慎重に確認しましょう。
「特定活動」は種類が多いのが特徴で、さらにその一つひとつに細かな要件が設定されています。そのため、確認には細心の注意が必要です。
書類の不備は不許可になりやすい
申請する際、記入漏れがある、また、足りない書類があるなどの不備がある場合、申請しても不許可になる傾向があります。申請したい「特定活動」にどんな書類が必要なのか、また、未記入の箇所はないかなど、入念にチェックしましょう。
申請する際は時間に余裕を持って手続きをする
「特定活動」を申請する際は、時間に余裕を持って手続きを進めましょう。
「特定活動」は提出する書類が多く、そのうえ、在籍していた学校からの卒業証明書や勤務先の書類などが必要なケースあります。書類を揃えるにも時間がかかるため、早めに手続きすることが大切です。
「特定活動」には就労可と就労不可がある
特定活動は、日本での就労が認められる場合と認められない場合があります。
特定活動の就労が許可されていないケースでは日本で働くことはできないため、外国籍の方を雇用したいとお考えの方は、特に注意が必要です。
就労の可否を確かめるには「指定書」を確認します。「指定書」は特定活動を取得した際に発行される書類で、活動の内容や制限など、詳しく記載されています。
特定活動だけでは就労できないこともあるため、パスポートに添付されている「指定書」の内容を必ずご確認ください。
在留中の素行不良は不許可になりやすい
在留中に素行不良と判断された場合、不許可になりやすい傾向があります。
例えば、留学生にありがちなのが日本に残って就職活動を行う場合です。この就職活動は「特定活動」に該当しますが、その際、留学生本人の出席率や成績などが厳正に審査されます。
学生としての在留状況が良くないと判断されると、「特定活動」の認可は降りない可能性が大きいため注意が必要です。
まとめ:「特定活動」を取得する前に入念な準備を
本記事では、在留資格「特定活動」について解説しました。
- 特定活動とは既存の在留資格に当てはまらない活動
- 特定活動は3つに分類される・入管法で規定された特定活動・告示特定活動・告示外特定活動
- 主な特定活動
・(日本の大学などを卒業し就職
・インターンシップ等) - 申請条件は特定活動ごとに異なる(学歴、報酬、業務内容等)
- 取得方法は、入国、滞在中の方の就職、在留期間延長等で異なる
- 特定活動5つの注意点
・特定活動の取得要件を確認する
・書類の不備は不許可になりやすい
・申請する際は時間に余裕を持って手続きをする
・「特定活動」には就労可と就労不可がある
・在留中の素行不良は不許可になりやすい
特定活動は、在留資格の中でも種類が多く必要書類も多いため、不備が起きやすく、不許可になる傾向も高い資格といえるでしょう。手続きを円滑に進めるためには、行政書士などの専門家に相談されるのもおすすめです。
本記事が、特定資格の手続きのハードルを少しでも下げるためのお役に立てたら幸いです。