
在留資格「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」を持っている方の中には、日本でのキャリアアップのために転職を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、外国人の方の転職には様々なルールがあるため、知らないとスムーズに進まない場合もあります。
本記事では、
- 技人国ビザで転職する際に必要な手続きの流れと注意点
- 技人国ビザの転職活動で失敗しないチェックポイント
などを分かりやすくお伝えします。
技人国ビザで転職するための手続きやルールをきちんと理解し、起こりがちなトラブルを避けたいとお考えの方はぜひ最後までチェックしてください。
技人国ビザとは

技人国ビザとは、在留資格の一つ「技術・人文知識・国際業務」の一般的な呼び名です。しばしば「技人国ビザ」と呼ばれますが、正確には在留資格を指します。
なお、ビザ(査証)は入国許可証のことで、入国時に必要な書類です。就労や転職の可否は、在留資格によって判断されます。
本記事では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を、技人国ビザの名称で解説していきます。
技人国ビザで転職する際に必要な手続きの流れ

技人国ビザで転職する際は「所属機関変更届」を提出する必要があります。手続きの流れは、以下の3ステップです。
| 【技人国ビザで転職する手続きの流れ】 1.「所属機関変更届」の様式を確認する 2.「所属機関変更届」を提出する 3.就労資格証明書を申請する |
就労資格証明書は必須ではありませんが、取得しておくと入管(出入国在留管理庁|以下、入管)での審査が格段にスムーズになるため、ぜひ確認してください。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
転職活動の状況に応じて「所属機関変更届」の様式を確認する
「所属機関変更届」は、ご自身の転職活動の状況に応じて、以下3つの様式があります。
【所属機関変更届の様式】
| 転職活動の状況 | 様式 |
|---|---|
| 転職先が決まった後で退職した場合 | 出入国在留管理庁|契約終了と新たな契約締結の届出 |
| 転職先が決まらず退職した場合 | 出入国在留管理庁|契約機関との契約が終了した場合の届出 |
| 退職後に転職先が決まった場合 | 出入国在留管理庁|新たな契約機関と契約を締結した場合の届出 |
新しい職場が決まらないまま退職し、転職活動中の場合でも「所属機関変更届」の提出が必要です。必ず、ご自身の転職活動の状況に合った様式はどれかを確認しましょう。
退職・転職後14日以内に入管へ「所属機関変更届」を提出する
必要な「所属機関変更届」の様式を確認したら、退職、または転職後14日以内に入管へ提出します。「所属機関変更届」の提出方法は、以下の3つです。
【「所属機関変更届」の提出方法】
| 提出方法 | 概略 |
|---|---|
| 入管窓口 | 在留カードを持参し最寄りの地方出入国在留管理署へ行く |
| 郵送 | 在留カードのコピーを同封する・表書きに「届出書在中」または「NOTIFICATION ENCLOSED」(朱書きで)と記載する |
| インターネット | 出入国在留管理庁電子届システムより届出を行う |
郵送の場合は、必ずご自身でコピーを取っておくか、日本郵便の配達状況の記録が残るサービスを利用しましょう。「所属機関変更届」について詳しくは、出入国在留管理庁のホームページよりご確認ください。
必要に応じて就労資格証明書を申請する
技人国ビザを所有し、同じ在留資格の範囲内で転職したい場合、事前に就労資格証明書を申請しておくと便利です。
就労資格証明書とは、外国人の方が行える就労活動を入管が証明する文書です。技人国ビザで転職する際は、新しい仕事内容と在留資格が一致していることが重要となります。
しかし、実際には、在留カードだけでは判断がつかない場合もあります。このような場合、就労資格証明書があれば、具体的な活動が記載されているため、簡単に判断できます。そのため、外国人の方も転職先の企業も、スムーズに転職の手続きを進めることが可能です。
ちなみに、就労資格証明書の申請は、在留期間が6ヶ月以上残っているタイミングで行うのが安心です。申請後、審査には1~3ヶ月の期間がかかります。在留期間が残り少ない場合、許可される前に在留期限が切れてしまう、といった不測の事態が起こりかねません。
このような予期しないトラブルを避けるためにも、申請する際は在留期限を確かめ、余裕を持って手続きを進めましょう。
技人国ビザで転職する際の注意点

技人国ビザで転職する際の主な注意点は、以下の6つです。
- 無職期間を3か月以上空けない
- 届出や申請を忘れず必ず行う
- 転職後初回のビザ更新は審査が厳しくなる
- 学歴・職歴と仕事内容のミスマッチを避ける
- 給与が日本人と同等以上である
- 在留期限に余裕を持って転職活動を進める
一つずつ見ていきましょう。
無職期間を3か月以上空けないこと
一つ目の注意点は、無職の期間を3ヶ月以上空けないことです。入管法で「在留資格の取り消し」が定められており、正当な理由なく3ヶ月以上無職の状態が続く場合、在留資格を取り消される可能性があります。
転職する際は上記を念頭におき、3ヶ月以内に就労先を見つけましょう。
参照:出入国在留管理庁|在留資格の取消し(入管法第22条の4)
届出や申請を忘れず必ず行うこと
2つ目の注意点は、届出や申請は必ず行うことです。
技人国で転職する場合、入管へ退職や転職の届出を行うことが義務付けられています。必要な届出や申請をしなかった場合、20万円以下の罰金が科されることもあるため、忘れずに行いましょう。
転職後初回のビザ更新は審査が厳しくなること
技人国ビザでの転職後、初回のビザ更新(在留期間更新)は審査が厳しくなる傾向があります。
これは、新しい会社での業務内容が技人国ビザの在留資格に定められた要件に合致しているか、転職先企業の経営状況などを、入管で一から審査するためです。加えて、外国人の方が転職する前の無職期間の有無や、前職を退職後14日以内に「所属機関変更届」を提出していたかなども審査されます。
審査の結果によっては、ビザ更新の許可が降りないケースもあるため、注意が必要です。このように、転職後初回のビザ更新は、通常のビザ更新よりも審査が厳しくなります。日頃から在留資格と職務内容の確認、そして届出義務を怠らないよう気をつけましょう。
学歴・職歴と仕事内容のミスマッチを避けること
技人国ビザで転職する際は、外国人本人の学歴・職歴と転職先の仕事内容が一致している必要があります。
技人国ビザの場合、専門的な知識や技能を活かせる業務であることが必須であり、単純労働は認められません。もし、学歴や職歴と転職先の業務内容に適合性がないと判断された場合、在留期間の更新が不許可になるリスクが高まります。
転職時は、成績証明書などで履修科目を明確にし、新しい業務との関連性を客観的に証明する準備をしておくと安心です。
給与が日本人と同等以上であること
技人国ビザでの転職は、新しい職場の給与が、その会社の日本人と同等以上であることが必要です。
例えば、同じ職種に従事する日本人社員の給与が20万円なのに対し、外国人材の給与が17万円の場合、申請しても許可は降りません。技人国ビザで転職する際は、転職先の報酬額を必ず確認しましょう。
在留期限に余裕を持って転職活動を進めること
技人国ビザで転職する際、在留期限に余裕を持って転職活動を進めることが重要です。
前述した通り、転職後初めて在留期間更新の手続きを行う際は、通常の更新よりも厳しい審査が行われます。審査期間が長引くことや、場合によっては不許可となるリスクも否めません。
在留期限が切れてしまうと、就労できないばかりか不法滞在とみなされる場合もあるため、在留期限には十分気をつけ、余裕を持った転職活動を行いましょう。
技人国ビザの転職活動で失敗しないためのチェックポイント

技人国ビザでの転職活動を成功させるためのチェックポイントを5つ紹介します。
- 学歴・職歴と仕事内容が一致しているかチェックする
- 労働条件・雇用条件を確認する
- 必要な書類や情報を事前に準備しておく
- 転職先のビザ手続きサポート体制を確認する
- 不安な場合は行政書士など専門家に相談する
以下に、一つずつ解説します。
学歴・職歴と仕事内容が一致しているかチェックすること
まず、学歴・職歴と仕事内容が一致しているかをチェックすることが重要です。もし、転職先の仕事内容が技人国ビザと一致しない場合、不許可になってしまうため、必ず確認しましょう。
労働条件・雇用条件を確認すること
次に、新しい会社の労働条件や雇用条件が、技人国ビザの要件を満たしているかを確認してください。
具体的には、仕事量が十分にあるか、また、給与は転職先の会社の日本人と同等以上かといった条件です。入管の審査の際、技人国ビザの要件が満たされていないと判断されると、許可が降りない可能性が高まるため、事前に確認しておきましょう。
必要な書類や情報を事前に準備しておくこと
転職活動をスムーズに行うためには、必要な書類や情報をあらかじめ準備しておくことも大切です。
【必要書類】
- 所属機関変更届
- 在留カード
【必要な情報(「所属機関変更届」に記入する内容)】
例えば、新しい会社に転職した場合、以下の情報を準備しておくことで、未記入や誤記入などを防ぐことができます。
| ・届出人の居住地 ・在留カード番号 ・在留資格の種類 ・新しい会社に入社した日 ・退職した会社の名称、所在地、法人番号 ・新しい会社の名称、所在地、法人番号 ・新しい会社での活動内容 |
技人国ビザでの転職活動の失敗をなくし、スムーズに進めるため、状況に応じて必要な書類や情報を先に準備しておきましょう。
転職先のビザ手続きサポート体制を確認すること
転職先にビザ手続きのサポート体制が整っているかを確認しましょう。
就労中に在留期限が近づく、仕事内容によっては在留資格の変更が必要になるなど、様々なケースが出てきます。そのたびに、入管の規約に基づいた手続きが必要なため、会社がビザ手続きをサポートしてくれるかは、会社選びにおいて重要なポイントです。
転職した後も安心して仕事を続けられるよう、サポート体制が整っている会社かどうかを確認しましょう。
不安な場合は行政書士など専門家に相談すること
技人国ビザでの転職が不安な場合は、行政書士などの専門家に相談しましょう。
専門家にご自身の学歴や職歴、現在の状況を伝えることで、注意すべきポイントや必要書類など的確なアドバイスを受けることができます。
まとめ

本記事では、技人国ビザでの転職について以下のことをお伝えしました。
| 【まとめ】 1.技人国ビザとは 在留資格「技術・人文知識・国際業務」の一般的な呼び名 2.技人国ビザで転職する際に必要な手続きの流れ ・「所属機関変更届」の様式を確認する ・退職・転職後14日以内に入管へ「所属機関変更届」を提出する ・必要に応じて就労資格証明書を申請する 3.技人国ビザで転職する際の注意点6つ ・無職期間を3か月以上空けない ・届出や申請を忘れず必ず行う ・転職後初回のビザ更新は審査が厳しくなる ・学歴・職歴と仕事内容のミスマッチを避ける ・給与が日本人と同等以上である ・在留期限に余裕を持って転職活動を進める 4.技人国ビザの転職活動で失敗しないためのチェックポイント5つ ・学歴・職歴と仕事内容が一致しているかチェックする ・労働条件・雇用条件を確認する ・必要な書類や情報を事前に準備する ・転職先のビザ手続きサポート体制の確認する ・不安な場合は行政書士など専門家に相談する |
技人国ビザの転職は、状況に応じた必要書類の提出や提出の期限など、様々な気をつけるべきポイントがあります。また、新しい職場や業務内容が技人国ビザに適しているかの判断がつきにくい場合もあるでしょう。そんなときは、ぜひ行政書士など法律の専門家に相談してください。
本記事が、技人国ビザでの転職活動を行う外国人の方にとって、安心して日本で働き続けられるようお役に立てたら幸いです。
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