
技人国ビザを保有する外国人材を雇用したい。しかし、技人国ビザと単純労働との業務範囲の区別がつきにくく判断が難しいと感じている方は多いでしょう。本記事では、技人国ビザが自社の業務に該当するのか、法的な解釈が難しいと感じている担当者の方のために、
- 技人国ビザで単純労働はできるの?
- 単純労働とみなされる業務内容
- 例外的に単純労働が認められるケース
- 技人国ビザの外国人材を雇用する企業側の注意点
などを分かりやすくお伝えします。
もし、技人国ビザの業務範囲を超えていた場合、企業側も外国人本人も刑罰に問われかねません。意図せず不法就労や不法滞在などの問題に巻き込まれるリスクを避けるためにも、ぜひご確認ください。
技人国ビザで単純労働はできる?

技人国ビザでは、原則として単純労働はできません。技人国ビザに該当する活動は、自然科学・人文科学に属する高度な技術や知識、または母国の文化で培った思考・創作活動などを必要とする業務です。
具体的な活動としては、技術者、通訳、デザイナーなどが挙げられます。一方、専門知識を要しない単純労働の場合、技人国ビザでの就労は認められていません。
単純労働とみなされる業務内容・例外となるケース

それでは、どのような業務内容が単純労働とみなされるのか、具体例に見ていきましょう。また、例外的に認められるケースについても紹介しますので、ご確認ください。
典型的な単純労働の具体例
典型的な単純労働の例としては以下のような業務が挙げられます。
- レストランでの配膳、片付け、電話受付、駐車場誘導
- ホテルでの客室清掃、宿泊客の荷物運び
- 小売店でのレジ打ち、品出し
- ビルの清掃業務
- パソコンのデータ保存、バックアップ作成
上記のような単純労働は、訓練を受けることで誰でも従事できる作業です。高度な知識は必要としないため、技人国ビザには該当しません。具体的には、以下のようなケースが単純労働に該当します。
【単純労働と判断されるケース】
| 習得した内容 | 就労先 | 実際の業務 | |
| ケース1 | ベンチャービジネス学科卒業 | バイク関連の輸出入を行う企業 | タイヤの交換やフレームの修理等 |
| ケース2 | 経済学部卒業 | ホテル | 客室清掃等 |
上記のように、習得した内容と勤務する企業との間に関連性がある場合でも、実際に従事する業務内容に専門性が認められないケースは単純労働と判断されます。ちなみに、単純労働で就労可能な在留資格には「特定技能」があります。
外国人の方を雇用する際は、企業の業務内容に適した在留資格の人材を確保しましょう。
例外的に認められるケース
技人国ビザでの単純労働は認められていませんが、例外的に認められるケースもあります。
主には、以下の3つです。
- 研修の一環としての単純労働
- 該当する業務に付随する単純労働
- 一時的な単純労働
それでは、1つずつみていきましょう。
1.研修の一環としての単純労働
研修の一環としての単純労働は例外的に認められています。例えば、スーパーの本社営業部や管理部門等の幹部候補者として採用される外国人材が、2年間の実務研修を受ける場合等です。
研修内容が、商品の陳列、レジ打ち、接客など単純労働の場合でも、外国人材のキャリアステッププランを入管に提示することで就労可能になります。キャリアアッププランには、研修終了後に幹部候補者として従事することを明確に記載することが重要です。
2.該当する業務に付随する単純労働
技人国ビザに該当する業務に付随して行う単純労働も認められています。
例えば、自動車整備主任者としての業務に従事するかたわら、自動車の基幹部分の点検・整備・分解等の単純労働に携わる場合等です。この場合は、技人国ビザの主たる業務に付随する業務内容として認められます。
3.一時的な単純労働
やむを得ない理由で、一時的に単純労働を行う場合も例外的に認められます。例えば、普段はホテルのフロント業務に従事しているが、団体客などの一時的な対応のため、宿泊客の荷物を部屋まで運ぶ等の場合です。
このように、例外として認められるのはあくまで「専門業務」が主である場合に限ります。
加えて、従事する業務が主である業務に付随したものか、又、一的に行うものかという点も判断の基準になります。
例外が認められるかどうかは、在留期間中の実際の業務内容や活動状況を元に、入管が総合的に審査しているのです。
技人国ビザの外国人を雇う企業側の注意点

技人国ビザの外国人を雇う企業側の注意点を2つ紹介します。
- 雇用契約で業務内容を明確に定める
- 実際の業務内容が契約内容と合致しているか確認する
注意点をあらかじめ知っておくことで、不許可になったり不法就労と判断されたりするリスクを減らせます。それでは、詳しくみていきましょう。
1.雇用契約で業務内容を明確に定める
一つ目は、業務内容の「具体性」かつ「専門性」を明確に定めたうえで契約を結ぶことです。
業務内容の具体性を明確に定める
「幹部候補として採用し実地研修をする場合、キャリアアッププランを作成して、将来的には地位が確約されていることをきちんと示す」といったように、業務内容を明確に定める必要があります。
説明が不十分で、幹部候補として従事することが確約されていないと判断された場合、不許可になるリスクが高まります。
業務内容の専門性を明確に定める
加えて、外国人材の業務内容は、専門性が分かるよう明確に記載しましょう。業務内容が単に「事務」「通訳・翻訳」などと記載されている場合、入管(※)で行われる審査の際、技人国ビザに該当するかの判断がつきません。
(※)入管:出入国在留管理庁の略称
このような場合、専門知識や高度な技術を要する業務であることを明確に記載する必要があります。例えば、「海外事業本部における貿易等に係る会計業務」「海外事業部における商談の通訳及び契約資料の翻訳」など、専門性が分かるよう詳細に記載しましょう。
不備がある場合、申請後に出入国在留管理局から問い合わせが来ることもあり技人国ビザの在留資格に該当しないと判断されると、不許可になるケースもあり得ます。契約書では、具体的かつ専門性を明確に示した業務内容を定め、技人国ビザに該当することが分かるよう記載してください。
実際の業務が契約内容と合致しているか確認する
二つ目の注意点は、外国人が行う実際の業務が契約内容と合致しているかを確認することです。
契約内容で、ホテルの予約管理・通訳業務となっている方なら、実際に従事する業務がレストランの配膳や客室の清掃など、単純作業のみの場合、契約内容と合致していないと判断され、不許可になる確率が高まります。
また、許可が降りたあとに発覚した場合、企業側、外国人本人の両者に以下の刑罰を科せられるケースもあるため、細心の注意が必要です。
【契約内容と実体に齟齬があった場合の罰則】
企業側:不法就労助長罪、外国人雇用状況の届け義務違反等
外国人本人:在留資格の取消し、5年間の強制退去処分等
リスクを抑えるためにも、企業側で労務管理体制を整えることが重要です。企業の情況の変化等で、外国人が申請時とは異なる業務に就いている場合もあるからです。
もし、技人国ビザの就労範囲を超える場合、実際の業務に適した在留資格に変更するための手続きが必要になります。定期的に外国人材の就労状況を把握し、トラブルを未然に防ぎましょう。
まとめ

本記事では、技人国ビザでの単純労働について以下のことをお伝えしました。
| 1.技人国ビザで単純労働はできない 2.単純労働とみなされる業務内容 ・配膳、清掃、レジ打ち等 3.例外的に認められる3つのケース ・研修の一環、主たる業務に付随する単純労働、一時的な労働 4.技人国ビザの外国人を雇う企業側の注意点 ・雇用契約で業務内容を明確に定める(キャリアアッププランの作成、専門性) ・実際の業務が契約内容と合致しているか確認する |
技人国ビザの業務範囲と単純労働は、法的に判断がつきにくい場合もあります。
そんなときは、行政書士など、外国人雇用に関する法律の専門家に相談してください。
本記事が、人手不足を解消したいとお考えの担当者の方にとって、外国人材を安心して受け入れるための一助となれたら幸いです。
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